引越して2日目。
初日にお酒を飲んで実家に泊まってしまったから当たり前であるが、家の中はダンボールだらけでとても生活できるような状況ではない。
そのうえ寒い。
古民家だといえば格好いいが、ただの古い家ということでもある。すきま風がピューポー入ってきて首筋などをいたずらに撫でる。
そこでまずストーブに火を入れることにした。

薪ストーブである。
妻が「田舎で暮らすのはいい。不便なことも我慢する。でも寒いのだけはイヤ!イヤといったらイヤ!」と泣いて懇願するので、昨年の夏に大奮発し、強力な薪ストーブを設置しておいたのだ。
お世話になった薪ストーブの業者さんはこちら。
さすがに夏に着火することもできず、昨年のクリスマス前に三重にきたときに、業者さんに改めて家にきてもらって着火式を行い、着火方法や運転方法を教えてもらったが、自分ひとりで火をつけるのは今回が初めてである。
引越し祝いにもらった薪をストーブに少しだけいれ、これまたストーブの業者さんにもらった着火剤で火をつける。シーズン当初はいきなり温度をあげたらダメで、少しずつ慣らし運転をしなくてはいけないそうだ。
1時間ほど運転し、最初の薪が燃え尽きたところで、今度は薪を山積みにして火をつけ本格的に運転をはじめる。
ゴォーゴォーとすごい炎である。ストーブのまわりはすぐに暑くなる。
が、1時間たっても家の中は寒いままである。
ストーブを設置した際、私は妻にフフフと笑い、
「もうこれで大丈夫。暖かいどころか暑くなるよ。Tシャツ一枚どころか素っ裸でもすごせるんだかんな!」などとホザいていた自分が呪わしい。
「ねぇねぇ、いつになったらTシャツでいられるぐらい暖かくなるの?」
不安げにきく妻。
「薪ストーブは自然な空気の対流で暖めていくのだから時間がかかるよ」
余裕いっぱいで答えつつ、薪を大量に放り込む私。
そして夜・・・。
ストーブ運転から半日にたってようやく家が温まりはじめた。
しかし2階にいくと寒いし、Tシャツ一枚でいられるような状況ではない。
何か私は間違っているのか?
私の何が悪いのか?
ストーブを入れる際、業者さんに言われたことを思い出す。
「この家は窓んところに笑っちゃうぐらい隙間がたくさんあるから、ひょっとしたら窓をサッシに変えて隙間を埋めないと、どんなストーブでも温まらんかもしれんで・・・・」
これはひょっとしてその「ひょっとして」なのか。
寒さに震える妻の視線が痛い。